キャリアの軸をどう設定するか?自己分析の深め方
目次
―不確実な時代を生き抜く「選択」の指針とは―
第1章:なぜキャリアの軸が曖昧だと危ういのか?——現代の転職市場と後悔の実態
キャリア選択において最も重要なのは「どこに行くか」ではなく「なぜそこへ向かうか」です。しかし、現実には多くのビジネスパーソンが「なんとなくの不満」や「今の会社にいる理由が見つからない」など、ネガティブな理由で転職を考えています。
データで見る「軸なき転職」のリスク
dodaの2024年調査によれば、「転職して後悔している理由」の第1位は「思っていた仕事と違った」、第2位は「企業文化に合わなかった」というものでした。これらはいずれも、「自分が本当に大事にしたいこと=キャリアの軸」が定まっていないまま意思決定した結果とも言えます。
変化の激しい時代ほど「軸」が重要になる
働き方改革、生成AIの浸透、ジョブ型雇用への移行といった急激な環境変化により、「転職すれば安泰」「大手だから安心」といった固定観念は通用しません。不確実性が高まる中で、自分の意思決定の羅針盤となる「キャリアの軸」を持つことが、これまで以上に重要になっています。
第2章:自己分析の本質とは何か?——“過去・現在・未来”から見つめる自分
自己分析というと、「自分史」や「モチベーショングラフ」を作るといった方法が定番です。しかし、ツールを使ったからといって自己理解が深まるわけではありません。大切なのは、**「問いの設計」と「構造的な振り返り」**です。
過去:成功・失敗から価値観を抽出する
- 過去10年間で最も達成感を感じた経験は何か?
- なぜその経験が印象に残っているのか?
このような問いを通して、自分が何に動機づけられ、何を「成功」と定義しているかを言語化します。
現在:得意なこと・苦手なことの整理
- 業務の中で「自然と任される仕事」は何か?
- 他人に評価されるスキルは?
自己認識と他者評価を擦り合わせることで、強みの本質が見えてきます。
未来:ありたい姿・ライフプランとの接続
- 5年後、どのような生活を送りたいか?
- そのために何を得る必要があるか?
将来の理想像から逆算して、今の選択が中長期とどう接続するかを確認することが不可欠です。
第3章:キャリアの軸を見出すための3つのアプローチ——価値観・強み・ありたい姿
ここでは、自己分析で得た材料から、キャリアの軸=意思決定の拠り所を明確にするための具体的なアプローチを3つ紹介します。
1. 価値観の掘り下げ
「年収」「成長」「社会貢献」「裁量」「安定」など、人が重視する価値観は千差万別です。大切なのは、それらの優先順位と理由を明らかにすることです。例えば、年収が1位ならば「なぜお金が必要なのか?」を問うことで、軸の裏側にある価値が浮かび上がります。
2. 強みの再定義
単なる「スキルの棚卸し」では不十分です。重要なのは、強みがどんな環境・役割で発揮されるかを把握すること。たとえば、「論理的思考力」が強みだとしても、それが「抽象思考を要する戦略立案」なのか「複雑業務を整理するオペレーション設計」なのかで適職は変わります。
3. ありたい姿の可視化
抽象的なビジョンではなく、「平日18時に仕事を終えてジムに通いたい」「部下と一緒にプロジェクトを成功させるリーダーになりたい」といった日常レベルでの理想像を具体化することで、リアルな判断基準が生まれます。
第4章:「迷わない選択」のための実践フレームワーク——Will-Can-Must×ライフビジョン
自己分析の結果を実際のキャリア選択に落とし込むためには、意思決定の軸をフレームワークで整理することが有効です。中でも定番であり実効性が高いのが「Will・Can・Mustモデル」です。
| 項目 | 内容 | 例(企画職希望の場合) |
|---|---|---|
| Will(やりたいこと) | 自分が情熱を持てるテーマ・役割 | 社会課題解決に関わる事業づくり |
| Can(できること) | 自分のスキル・経験・適性 | 財務分析、資料作成、リーダー経験 |
| Must(求められること) | 市場・組織からのニーズ | 変化に強い新規事業人材、DX人材 |
これに加えて、「ライフビジョン」との接続も忘れてはなりません。たとえば「家族との時間を優先したい」ならば、転職先における働き方や勤務地の柔軟性がMustの前提条件となります。仕事と生活のバランスは軸の土台です。
第5章:軸が定まった人のキャリアの進み方——成功事例と未来像の描き方
最後に、実際に「キャリアの軸を明確にした上での転職」に成功した事例を紹介します。
事例1:総合商社からスタートアップ経営企画へ
・転職者:31歳、早稲田卒、商社での営業経験5年
・軸:社会課題解決×事業創造×裁量
・選択理由:大企業の調整型業務から離れ、「自ら設計し推進する仕事」がしたいというWillを実現
・結果:シリーズBのHR系スタートアップに経営企画として転職し、事業戦略と資金調達に従事。年収は一時下がるも、充実感と成長実感が格段にアップ。
事例2:コンサルからメーカーの事業企画へ
・転職者:29歳、慶應卒、戦略コンサル出身
・軸:ものづくり×グローバル×中長期視点
・選択理由:短期プロジェクトではなく、自分の意志で一つの事業を育てたいというWillが強くなったため
・結果:大手電機メーカーの事業戦略部門へ。初めての事業サイドで苦労しつつも、キャリアの納得感が大幅に向上。
おわりに:軸は「探す」ものではなく、「掘り出す」もの
キャリアの軸は、誰かに与えられるものではありません。過去の経験、今の価値観、未来のありたい姿を丁寧に見つめ直す中で、自ずと浮かび上がるものです。そしてそれは一度設定したら終わりではなく、ライフステージや価値観の変化に応じて更新されていくべきものです。
キャリアに迷いがあるとき、外に答えを求めがちですが、最も確かなヒントは自分の内側にあります。忙しさに流されず、今こそ立ち止まって、「自分は何に喜びを感じ、何に違和感を持ち、どんな未来を望むのか」を言葉にしてみてください。
その言語化こそが、ブレないキャリアの土台=キャリアの軸を築く第一歩になるはずです。
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