コラム

転職は手段、目的は何か?「キャリアの本質」を見直す必要はあるのか

転職は手段、目的は何か?キャリア設計の本質を考える

1. はじめに──なぜ今「キャリアの本質」を見直す必要があるのか

「転職」は今や特別な選択ではありません。令和の時代、20代後半から30代前半にかけての転職は、一種のライフイベントのように一般化しています。リクルートワークス研究所の調査によれば、転職経験者の割合は年々増加しており、特に30代のビジネスパーソンではおよそ半数が一度以上の転職を経験しています。

しかし、転職市場の活況とは裏腹に、「転職したはいいものの、思っていたものと違った」「なぜ自分はこの会社に来たのか分からなくなった」といった、迷いや後悔の声も少なくありません。こうしたミスマッチの背景には、「転職=目的」になってしまっている構造的な問題があると考えられます。

本来、キャリア設計とは「自分がどう生きたいか」に起点を置くべきです。転職はその手段に過ぎません。手段が目的化してしまうと、目先の条件ばかりに目を奪われ、本質を見失うリスクが高まるのです。

本コラムでは、「転職はあくまで手段」という原則に立ち返りながら、キャリア設計の本質を掘り下げていきます。

2. 転職はゴールではない──目的を見失ったキャリア選択のリスク

転職活動において、どうしても目につきやすいのは「年収」「企業名」「業界トレンド」といった外的要因です。もちろん、これらは意思決定において無視できない要素でしょう。しかし、それらが自分の価値観や人生の方向性と一致していない場合、転職後に早期離職やモチベーションの喪失を引き起こすことになります。

たとえば、外資系企業への転職で年収は上がったものの、ワークライフバランスが極端に悪化し、心身をすり減らしてしまうケース。または、ネームバリューを優先して業界のトップ企業に入ったものの、自分が本当に関心を持てる業務と乖離していた、という声もよく聞かれます。

こうしたケースに共通するのは、「転職そのものが目的になっていた」ということです。「現職が嫌だから」「条件が良さそうだから」といった表層的な理由で転職を決断すると、次の職場もまた“仮住まい”になり、キャリアが迷走する危険性を孕んでいます。

目的を見失った転職の代償は大きい。だからこそ、まずは「自分は何を求めているのか?」という問いから逃げずに向き合う必要があるのです。

3. キャリア設計の3ステップ──自己理解・価値観の明確化・将来像との接続

キャリア設計の本質は、「手段と目的を一致させること」にあります。そのためには、以下の3ステップで思考を深めていくプロセスが重要です。

ステップ1:自己理解を深める

最初に必要なのは、自分の過去と現在の棚卸しです。どんな経験にやりがいや充実感を感じたのか、逆にどんな状況にストレスを感じたのか。仕事・プライベートを問わず、自分の感情が動いた瞬間に注目して言語化することで、価値観の輪郭が見えてきます。

ステップ2:価値観を明確にする

「働くうえで大切にしたいことは何か?」という問いに対して、5つのキーワードを出してみましょう。たとえば「挑戦」「自由」「貢献」「安定」「成長」など。この優先順位をつけることが、職種や業界、企業選びの基準となります。

ステップ3:将来像と接続する

最終的に、自分はどんな人生を送りたいのか。どんなライフスタイルを理想としているのか。この問いに答えられなければ、手段選びは常にブレてしまいます。仕事はあくまで人生の一部です。キャリアの意思決定は、5年後・10年後の自分が後悔しない選択になっているかを意識することが欠かせません。

4. 「転職すべきか」の判断基準を見直す──手段と目的の整合性

では、転職をするかどうかの判断は、どのような軸で行うべきでしょうか。ポイントは以下の2点に集約されます。

①現職で実現できない明確な目的があるか

単に「なんとなくモヤモヤする」「周囲が転職しているから」といった理由で動き出すと、転職先でも同様の違和感に襲われるリスクがあります。逆に、「このスキルを活かしたい」「このビジョンに共感した」といったポジティブな理由であれば、動機がブレにくくなります。

②次の職場がその目的に合致しているか

候補企業のビジネスモデル、組織文化、職務内容をよく分析し、「その環境で自分の目的が叶うか?」を問い直すことが重要です。転職は“出会い”ではなく“設計”です。目的に合わないなら、内定をもらっても断る勇気を持つべきです。

5. ケーススタディ:手段と目的を混同した結果、迷走したキャリア/一方で再設計で成功した事例

失敗例:年収アップを最優先した結果、早期離職に

総合商社から年収アップを狙ってSaaSスタートアップに転職したAさん。表面上の条件は理想的だったが、文化の違いや職務内容のミスマッチにより、半年で再転職。結局、当初のキャリアの軸を見失い、職務経歴に傷がついてしまった。

成功例:キャリアの目的を再定義し、納得度の高い転職へ

広告代理店で働いていたBさんは、出産を機に「家族との時間を大切にしたい」と価値観が変化。年収は若干下がったものの、在宅勤務可能な地方企業のマーケティング職へ転職。結果として、仕事と生活のバランスが整い、長期的に働ける基盤を構築した。

このように、「転職をゴールにしない」視点が、その後のキャリアの安定と幸福度に直結してくるのです。

6. まとめ──手段に振り回されない、キャリアの軸を持つ重要性

転職という選択肢は、あくまで「人生をより良くするための手段」にすぎません。にもかかわらず、キャリアの迷子になってしまう人は、その手段に心を奪われ、目的との整合性を見失ってしまっているケースが多いのです。

本質的なキャリア設計とは、自分がどう生きたいか、何を大切にしたいかを明らかにし、その目的に沿って手段を選ぶという、極めて主体的な行為です。

焦らず、自分と対話しながら、「なぜ働くのか」「どんな未来をつくりたいのか」という原点に立ち返ること。それこそが、変化の時代を生き抜くビジネスパーソンにとって、もっとも重要な“羅針盤”となるのではないでしょうか。

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