事業会社企画職の採用ニーズは今後どう変わるか?
目次
1. はじめに:事業会社企画職の採用ニーズの現状
ここ数年、事業会社における「企画職」の採用が活発化しています。これは単なる景気回復による採用数増加ではなく、企業経営の根本的な構造変化が背景にあるといえます。従来、事業会社の企画職は経営層の意思決定を支える裏方の役割が主流でした。しかし近年は、経営戦略や事業成長の「ドライバー」としての企画職に対する期待が急速に高まっています。
特に注目すべきは、以下の3点です。
- 業績好調な企業において、M&Aや新規事業開発を担う企画部門が増強されている
- 不確実性の高い環境下で「仮説構築→実行→検証」を繰り返す実践的な人材への需要が高まっている
- DX・サステナビリティ・人的資本経営といった新たなテーマに対応できる企画人材が不足している
これらの変化により、企画職の採用ニーズは「守りから攻め」「分析から実行」へと移行しており、今後もこの傾向は続く見通しです。
2. 背景:DX推進と新規事業開発の加速
事業会社が企画職を強化する背景には、構造的なビジネス環境の変化があります。とりわけ、以下2点が採用ニーズに大きく影響しています。
① DX(デジタルトランスフォーメーション)の本格化
企業のDX推進は、IT部門に任せきりの「システム導入」フェーズから、全社戦略と業務設計を巻き込む「ビジネスモデル変革」フェーズへと進化しています。こうした中、以下のような能力が求められるようになりました。
| 求められる企画スキル | 説明 |
|---|---|
| 業務プロセス設計力 | デジタルツールを活用した業務フローの最適化 |
| データ活用設計力 | 経営やマーケに活かせるKPI設計・分析設計 |
| ステークホルダー統合力 | DXを部門横断で推進する巻き込み力 |
特に、経営企画・事業企画がDXを起点に全社改革を主導する動きは、多くの上場企業で顕著になっています。
② 新規事業開発ニーズの増加
低成長市場や既存事業の収益性低下を背景に、事業会社では「第二・第三の柱」育成を目指す新規事業開発が進んでいます。
企画部門が担う領域としては以下の通りです。
- 新市場の選定(リサーチと事業性評価)
- アライアンス・M&A検討と実行
- 新商品・新サービスのPoCや事業性検証
これに伴い、「机上の分析型」から「ハンズオン実行型」の企画人材が、かつてないほどに求められています。
3. 求められるスキルセットの変化
従来の企画職で重視されてきた「定量分析スキル」や「財務知識」は依然として重要です。しかし現在では、それに加えて以下のようなスキルが重視されるようになっています。
企画職で注目されるスキル(比較表)
| スキル領域 | 従来型 | 現在・今後型 |
|---|---|---|
| 分析力 | 数字の集計と説明 | 分析→仮説立案→実行設計まで担う力 |
| コミュニケーション力 | 上層部との報連相 | 現場部門や外部ステークホルダーとの交渉力 |
| ITリテラシー | 基本的なExcel操作 | BIツール、ノーコード、AIリテラシー |
| 実行力 | 提案止まり | 実行を担い、KPIをモニタリングする力 |
とりわけ30代前半の中堅層に求められるのは、以下のような「変化に適応し、リードできる力」です。
- 抽象度の高い課題を言語化・構造化する力
- 組織を横断し、プロジェクトを回す力
- 新しい技術や外部パートナーとの協業に前向きな姿勢
4. 業界別の採用動向と傾向
次に、業界ごとの企画職の採用トレンドを見ていきましょう。
主な業界別傾向(2024年~2025年予測)
| 業界 | 傾向 |
|---|---|
| 製造業 | 製販一体の事業戦略人材や海外展開を担える人材を強化 |
| 総合商社 | 新領域(再エネ、デジタル、スタートアップ)向けの企画職が急増 |
| 金融 | Fintech対応・非金融サービス開発の中核人材としての企画職を増強 |
| IT・通信 | プロダクト戦略・アライアンス設計の人材を積極採用 |
| 小売・サービス | オムニチャネルや顧客体験改善に強い人材が求められる |
とりわけ「業界横断の思考」「新規事業開発経験」「デジタル理解」を掛け合わせた人材は、どの業界からも引く手あまたになっています。
5. 転職市場における企画職の位置づけ
転職市場では、企画職は以下のようなポジションで中途採用が行われています。
- 経営企画/事業企画(年収レンジ:600万〜1200万円)
- DX企画・データ戦略(年収レンジ:700万〜1300万円)
- 新規事業開発/CVC企画(年収レンジ:800万〜1500万円)
採用の特徴としては以下のような点が挙げられます。
- 業界経験よりも「論理的思考」「成果志向」が評価される
- 年齢は30代前半〜半ばが最もニーズが高い(プレイヤーとしてもマネージャーとしても活躍できる年齢層)
- 一度でも「0→1」「1→10」のプロジェクトに関わった経験があると優遇される
また、転職エージェント各社が発表するデータでは、企画職の求人倍率は平均の約1.5〜2倍で推移しており、相対的に「売り手市場」が続いています。
6. アラサー人材が企画職を目指す際のポイント
早慶レベルの大手企業ビジネスパーソンが企画職へ転職を検討する際には、以下のような点を重視すると成功率が高まります。
① 自身の強みの「企画職的解釈」
- 「営業経験」→ 顧客接点に基づく事業仮説構築力
- 「経理経験」→ 財務インサイトに基づく戦略立案力
- 「IT・システム経験」→ 業務フロー改善やツール設計力
② 求人票に表れにくい要件の読み解き
- 「自走できる人材」=未整備な状況でも自ら課題設定ができる人
- 「経営視点」=単なるコストや売上だけでなく、中長期の成長性を意識した思考
③ 面接では「企画的ストーリー」で語る
実績や経験を伝える際には「課題発見→仮説→実行→結果→学び」という流れで話すと、企画職の業務に親和性のある人材であることが伝わります。
7. まとめ:今後のキャリア戦略としての企画職
事業会社における企画職の採用ニーズは、今後さらに進化し、量だけでなく質の面でも選別が進むと予想されます。変化の背景には、DX・サステナビリティ・新規事業開発といった「次の時代を切り拓くテーマ」があり、それらを戦略的に推進できる人材が求められています。
アラサーのビジネスパーソンにとって企画職は、「プレイヤーとしての経験」と「戦略人材としての素養」の両方を活かせる希少なフィールドです。キャリアの転機を迎えるこの時期、ぜひ一度、自身の経験と強みを「企画職的に再解釈」し、今後の成長戦略を描いてみてはいかがでしょうか。
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