外資戦略コンサル流のロジカルライティング:ロジカルシンキングを駆使した文章作成の実践アドバイス
目次
はじめに
ロジカルライティングは、情報を明確かつ効果的に伝えるための不可欠なスキルです。このコラムでは、ピラミッドストラクチャーを活用して論理関係を整理し、それを基に読者が理解しやすいストーリー構造と文章表現を構築する方法を詳しく解説します。具体例を交えながら、良い表現とそれを避けるべき例を示し、どのようにして簡潔で効果的なコミュニケーションを実現するかを説明します。
ロジカルライティングとは、論理的で相手に伝わりやすい文章を作成する手法である
- 「伝える相手」と「目的」に沿って書かれている文章
- 「結論」と「結論を支える根拠」に論理的整合性のある文章
ロジカルライティングの意義
誤解のない文章で仕事の効率化が出来る
ロジカルライティングは伝えたい事を短時間で効果的に理解・納得してもらう上で汎用的に役立つライティング手法であるため、様々な(ビジネス)シーンで重宝される
そもそもライティングの目的は、「自分の期待する反応を聞き手(相手)にとってもらう」ことである
思考のクオリティが上がり、ロジカルシンキングが出来るようになる
正しく記述できる、はすなわち正しく考えられることを意味します。論理性を意識しながら文章を書いていけば、おのずとロジカルシンキングも身につくでしょう。
実際に役立つシーン
思考の整理
考えながら書く(手書き/PC/スマホ)ことで、思考を整理し、自分やチームの論点・仮説をクリアにしていく
ワークプラン策定
ゴール/マイルストーンから逆算して、時限/役割分担を意識して記載する
MTGアジェンダ作成
会議の目的をふまえて、共有/相談/議論/合意したいことを明確に分けて記載する
MTGメモ(議事メモ)
合意事項は結論のみ記載、残論点は議論過程の重要内容を記載、また、ネスクトステップも明確に記載する
レポーティング(リサーチ/分析結果をまとめたメモ等)
プロジェクトの目的をふまえて、プロジェクトにおける示唆は何か?の観点で記載する。
企画書作成
ストーリーを意識し、メッセージドリブンで記載する
ロジカルライティングの全体像
ロジカルライティングは「①問いの確認」「②問いに対する答えのメッセージを作成」「③ メッセージをサポートする論理構造の作成」「④実際の文章化」の4ステップで実践される
①「問い」の確認|伝える相手、ライティングの目的に沿って自分が答えるべき「問い」を確認し、ワーク の方向性を合わせる
問い(論点)の設定は、解決よりも重要
ロジカルライティングにおいて、伝える相手とライティングの目的に沿った「問い」を明確にすることは、コミュニケーションの成功に不可欠です。この問いを確認する作業は、ワークの方向性を正しく定める上で中心的な役割を果たします。
どんなに答えが素晴らしくても、そもそもの問いが異なれば、その答えは価値を持ちません。
問い(論点)は往々にしてズレていく
聞かれた質問に答える
一見簡単そうに見えますが、多くの人は相手の問い(≒質問の意図)とずれた答え方をしているケースがあります。
日常生活においても「おすすめのバイトはある?」と質問されたにも関わらず、「最近はじめた居酒屋バイトがキツんだよね~」と返しているしまうようなケースは散見されると思います。
ビジネスにおいてはもっとズレる
ビジネスの状況では、扱うテーマの抽象度が高く、スコープが広いため、言葉の認識がズレやすいです。加えて、話し手と聞き手の立場や視点が異なることで、さらに問いがズレるリスクが増大します。たとえば、「マクドナルドの既存顧客」という言葉をひとつとっても、ある人は「マクドナルドに実際に来たことがある人」と捉え、またある人は「マクドナルドによく来るようなセグメント(小学生の子供を持つ夫婦世帯)」と捉えるでしょう。
問いを正しく理解するために|「論点ズレてますよ」を回避する方法
問いの理解を深めるためには、問いをカテゴリ化することが有効です。
質問は「クローズドクエスチョン(Yes/Noで答える質問)」と「オープンクエスチョン(より広い回答が可能な質問)」に分けられます。
これにより、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)といった要素を明確にすることができます。
②「問い」に対する答えのメッセージを作成
ロジカルライティングにおいて、「問い」に対する答えは、情報として必要十分であり、かつ簡潔に答えることが求められます。このアプローチを「アンサーファースト」と呼びます。つまり、最初に答えを提示し、その後で説明や詳細を追加する方式です。
クローズドクエスチョンへの回答例
質問: 「自社はドローン業界に参入すべきか?」
答え: 参入すべきである / 参入すべきでない
このようなYes/Noで答えられる質問には、直接的に肯定または否定で答え、その理由は後述することで、情報のクリアさを保ちます。
オープンクエスチョンへの回答例
質問: 「Zoomはなぜ流行ったのか?」(Why?)
答え: XXという理由で流行った
質問: 「最近の医療系ベンチャーのプレイヤー教えて」(Who?)
答え: XX、YY、ZZというプレイヤーがいる
オープンクエスチョンでは、質問の「何を」「なぜ」「どのように」といった要素に応じて、具体的な情報を列挙または説明します。ここでも、最初に直接的な回答を提供し、後に詳細を追加することで、受け手が情報を迅速に処理できるようにします。
③メッセージをサポートする論理構造の作成
ピラミッドストラクチャーとは
ピラミッドストラクチャーは、情報を構造的かつ論理的に整理するロジカルシンキング・ライティングの手法です。この方法は、結論を先に述べ、その後で結論を支える論拠を段階的に示すことで、伝わりやすい文章の骨格を構築します。
この構造を使用すると、結論とその結論を支える論拠が明確な論理で結びつけられるため、情報が受け手にとって理解しやすくなります。これにより、コミュニケーションの効果が高まります。
ピラミッドストラクチャーのルール
- 横のルール: 根拠や論拠の間で矛盾や重複がないように管理する必要があります(MECE原則)。各論点の抽象度は一致している必要があります。
- 縦のルール: 結論と根拠の間、および根拠同士の間には、明確な因果関係や補足関係が存在しなければなりません。
MECEによる情報の整理
MECE原則に従って情報を分解することで、論理的に整理された根拠を提供することができます。分解の方法には以下のようなものがあります:
- 時間軸/ステップで分解: 過去・現在・未来、または製造・加工・販売などのプロセス。
- 対照的な概念で分解: 個人/全体、量/質、事実/判断など。
- 要素で分解: 3C(Customer/Competitor/Company)、4P(Product/Price/Place/Promotion)、PEST(Politics/Economy/Society/Technology)。
一貫した軸と同じレベル感での整理
情報を整理する際には、一貫した軸を用いて同じレベル感で分類することが重要です。
(例1)食べ物の分類(一部)
(✖)果物/野菜/ピーマ
(〇)リ❝ゴ/バナナ/ミカ
(例2)言語におけるスキルの分類
(✖)考える/話す/演説する
(〇)話す/聞く/読む/書く
因果関係と補足関係のルール
- 因果関係: 上位のメッセージを下位のメッセージが複数サポートする形式で、帰納法や演繹法を適切に利用する。
- 補足関係: 下位のメッセージが上位のメッセージの具体例として機能する。
帰納法の定義と例
帰納法は、複数の観察事項から共通項を抽出して推論する技法です。この方法では、個別の事例から一般的な結論を導き出します。
- 具体例: 大学での学業成績と将来の成功の関連性事例: A君(首席卒業、事業成功)、B君(成績優秀、キャリア成功)、C君(成績不振、キャリア不安定)、D君(成績悪く、ニート)結論: 大学在学中に勉強に本気で取り組むことが将来の成功につながる
- 注意: 過度な一般化を避ける。すべての事例が同じパターンに当てはまるわけではないため、例外や条件を考慮する必要があります。
演繹法の定義と例
演繹法は、普遍性の高い前提から、個別具体的な観察事項に当てはめて推論する技法です。この方法では、一般的な原則を個々のケースに適用して結論を導きます。
- 具体例: 学生の勉強態度とその将来の成功前提: 成功者は大学時代に本気で勉強している観察: あなたは成功を望んでいる結論: あなたは大学で本気で勉強すべきである
- 注意: 前提の誤りが推論を無効にする。前提が正確でない場合、導かれた結論も無効になる可能性があります。
補足関係のルールと例
補足関係は、下位のメッセージが上位のメッセージを具体的に説明する関係を指します。これにより、抽象的な主張が具体的な例によって支持されます。
- 例: 政府のコロナウイルス対策上位メッセージ: 政府はコロナウイルスの感染拡大を防ぐために様々な対策を実施している。具体例: ワクチン接種推進、社会的距離の維持、公共の場でのマスク着用義務化
このように、帰納法、演繹法、および補足関係を理解し適切に適用することで、ロジカルな議論が構築され、コミュニケーションの効果が向上します。
ピラミッドストラクチャーの整合性チェック
ピラミッドストラクチャーの作成は、情報を効果的に整理し伝えるための強力なツールですが、その作成過程での論理的ズレを防ぐためには、作業終了時に以下の点を確認することが重要です。
1. 最上段の結論のチェック
- チェックポイント: 最上段に位置する結論が、初めに設定した「問い」に対して適切に答えているかどうかを確認します。
- 目的: 結論が問いに直接的に答えていることを確認することで、論理的な流れが保たれ、読者や聞き手に明確なメッセージが伝わるようにします。
2. 横の要素間のチェック
- チェックポイント: 横の要素がMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive:互いに排他的であり、総体として網羅的)であり、同じレベル感で構成されているかを確認します。
- 目的: 横の要素がMECEであり、同じ抽象度を持つことで、情報が網羅的かつ重複なく整理され、読者が情報を効率的に理解できるようにします。
3. 縦の要素間のチェック
- チェックポイント: 縦の要素間に明確な因果関係または補足関係が存在しているかを確認します。
- 目的: 因果関係は上位の結果を下位の原因で説明し、補足関係は上位の抽象的な記述を下位の具体的な例で補足することで、論理的な流れがスムーズに進み、情報の誤解を防ぎます。
④実際の文章化
ピラミッドストラクチャーで整理された論理関係を元に、全体の構成(ストーリー)や文章表現を分かりやすく整理して記述します。この段階では、情報が視覚的かつ文章としても理解しやすい形で提供されることが重要です。
サマリの作成と反応の明示をしよう
文章を書く前に、背景を含むサマリを作成します。これにはテーマと問いを提示し、最も核となる結論を明確にする作業が含まれます。ピラミッドストラクチャーの最上段にあるメッセージ(結論)を引用して、読者への導入部とします。
読み手に期待するアクションを明示しよう
伝えたい内容が理解されること、そして具体的な行動へと繋がることが期待されます。例えば、「情報の共有」や「アクションの要請」など、読者に何を期待しているのかを明確に示します。この過程で、誰が何をいつまでに行うかを具体的に指定し、誤解を避けることが重要です。
視覚的に分かりやすくしよう
表題や見出しを用いて各セクションのテーマを明示し、ピラミッドストラクチャーの論理関係を視覚的に表現します。これにより、文章の流れが読者にとって追いやすくなります。
具体的な文章化の技術を覚えよう
明確な表現の使用
良い表現と悪い表現の例を交えて、具体的な文章化の方法を示します。情報を過不足なく、具体的に記述することが求められます。
- 悪い例: 「コロナの感染対策を徹底する」
- 良い例: 「コロナの感染対策を徹底するために、三密を避け、他の行動を取り、細目に手洗いうがいをする」
体言止めと否定形は避けた方が良い
効果的な文章では、体言止めや否定形を避けることが推奨されます。これにより、文章はより直接的で明瞭になり、誤解の余地が減少します。
- 悪い例: 「市場は縮小する可能性」
- 良い例: 「市場は縮小する可能性が高い」
- 悪い例: 「私の好きな果物は、リンゴではない」
- 良い例: 「私の好きな果物は、リンゴではなくミカンである」
論理的整合性を確保しよう
横の要素間の繋がり
文章を書く際には、横の要素間が適切に連携し、情報がMECEに分けられることが必要です。これにより、情報の重複や漏れが防がれ、一貫性のある文章が完成します。
縦の要素間の流れ
上位のメッセージから下位のメッセージへの流れを保ちつつ、各セクションの結論を冒頭に書くことで、読者の理解を助けます。これにより、論理的な流れに沿った効果的なコミュニケーションが実現します。
このように整理されたコラムは、ピラミッドストラクチャーを基にした効果的な文章化のプロセスを体系的に示し、具体的な例を通じて実用的なライティング技術を提供します。
簡潔な文章にするために
文章を効果的に伝えるためには、簡潔さが重要です。良い文章は無駄が少なく、ポイントを明確にすることで読者の理解を助けます。
能動態で記述しよう
効果的な文章では、主語と述語を明示し、文は短く簡潔に保ちます。能動態の使用が推奨されるのは、受動態よりも直接的でエネルギッシュな表現が可能だからです。
- 悪い例:A高校の校則の70%は学生によって定められた
- 良い例:A高校の学生は校則全体の70%を定めた
無用な強調や重複を避けよう
良い文章は、同じ情報の繰り返しや不要な強調を避けることで、内容のクリアさを保ちます。情報を一度に伝え、読者が各ポイントの重要性を理解できるように構成します。
- 悪い例: 「ライティングで重要なことは、表現の明確化を行って書くことである」
- 良い例: 「ライティングでは、表現の明確化が重要である」
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